四柱推命の命式において、亡神(ぼうしん)と並んで二大凶星として恐れられているのが、この劫殺(ごうさつ)です。
文字を見るだけで、何かを奪われたり、殺されたりするかのような恐怖を感じるかもしれません。実際、古典的な解釈では、殺傷、盗難、災害といった外部からもたらされる災いを暗示する星とされています。
しかし、劫殺の劫という字には、脅かすという意味の他に、ただちに、素早いという意味も含まれています。 これは、この星を持つ人が、即断即決の行動力や、相手を圧倒する鋭い頭脳を持っていることの裏返しでもあります。
今回は、この強烈なエネルギーを持つ劫殺が、命式のどこにあるかによる影響の違いと、複数持っている場合の解釈について解説します。
劫殺とは何か?その本質的な意味
劫殺は、十二支の三合局(仲良しグループ)の力を断ち切る位置にある干支から導き出されます。 亡神が内部からの崩壊を表すのに対し、劫殺は外部からの衝撃を表します。
主な作用
- 外部からの災難 交通事故、天災、強盗、あるいは他人との争い事など、自分の不注意とは無関係に、外から降ってくるトラブルに巻き込まれやすい傾向があります。
- 奪われること 金銭、地位、名誉などが、予期せぬ形で奪われるリスクがあります。詐欺や保証人倒れなどには最大の注意が必要です。
- 鋭すぎる決断力 悪い意味ばかりではありません。この星は、白黒をはっきりとつける決断力と、頭の回転の速さを授けてくれます。 競争心の強さと、目的のためなら手段を選ばない冷徹さは、ビジネスやスポーツの世界では大きな武器となります。
各柱にある場合の解釈
劫殺が年・月・日・時のどの柱にあるかによって、災いの現れ方や、その才能が発揮される場面が異なります。
年柱に劫殺がある場合
年柱は、祖先、親、そして幼少期を表します。
故郷を離れる運命 生まれ育った土地や、親との縁が薄くなる傾向があります。 早い段階で実家を出て独立するか、あるいは海外など遠く離れた場所で生活することになりやすいです。 幼少期に親の事情で苦労したり、経済的に不安定な環境で育ったりする可能性がありますが、そのハングリー精神が後の成功の土台となります。
月柱に劫殺がある場合
月柱は、仕事、社会運、そして青年期から中年期を表します。
競争社会での闘争 職場において、激しい出世争いや派閥抗争に巻き込まれやすくなります。 ライバルに足を引っ張られたり、手柄を横取りされたりする悔しい経験をするかもしれません。 しかし、本人も負けず嫌いでタフなため、警察官、自衛官、外科医、弁護士など、戦うことが仕事である職業に就くと、劫殺の凶意が才能へと反転し、目覚ましい活躍を見せます。
日柱に劫殺がある場合
日柱は、自分自身のプライベート、配偶者、そして中年期を表します。
配偶者との激しい衝突 夫婦関係において、主導権争いが起きやすくなります。 お互いに一歩も引かず、言葉のナイフで傷つけ合うような喧嘩になりがちです。また、配偶者が金銭トラブルを持ち込んだり、配偶者のために苦労を背負ったりする可能性もあります。
健康面での急変 自分自身の肉体に関して、突発的な事故や急病のリスクがあります。特に刃物によるケガや手術には注意が必要です。
時柱に劫殺がある場合
時柱は、晩年、子供、部下を表します。
子供や部下の反乱 手塩にかけて育てた子供が反抗的になったり、信頼していた部下が裏切って独立したりと、目下の人間によるトラブルに悩まされる暗示があります。 また、晩年になってから投資詐欺などで財産を失うリスクもあるため、財布の紐は固く結んでおく必要があります。
劫殺が複数ある場合の解釈
命式の中に劫殺が2つ以上ある場合、そのエネルギーは極限まで高まります。 これは、大英雄になるか、大悪党になるか、紙一重の状態と言えます。
天才的な頭脳とカリスマ性
劫殺が重なる人は、常人離れした頭の良さと、鋭い感性を持っています。 誰も思いつかないようなアイデアを出したり、危機的状況を鮮やかな手腕で解決したりします。そのカリスマ性で多くの人を惹きつけ、一代で巨万の富を築くことも珍しくありません。
法律トラブルと事故の常習
一方で、リスクを顧みない性格が災いし、法に触れるような行為に手を染めたり、無謀な運転で事故を繰り返したりする危険性も高まります。 自分の能力を過信し、強引に進みすぎると、ある日突然すべてを失うような強烈なしっぺ返しを食らうことになります。
吉星との組み合わせが鍵
劫殺が複数あっても、天徳貴人や天乙貴人といった強力な吉星が一緒にある場合は、大吉に転じます。 劫殺の持つ攻撃力が権威やリーダーシップへと昇華され、大企業の社長や政治家として大成する器となります。
劫殺の凶作用を避け、活かすための対策
この強力な星を乗りこなすためには、以下のことを意識してください。
1. 争う場所を選ぶ
劫殺のエネルギーは、平和な日常ではトラブルの種にしかなりません。 スポーツ、格闘技、ディベート、厳しいノルマのある営業など、戦うことが許されている環境に身を置くことで、その攻撃性を正当な評価へと変えることができます。
2. 謙虚さと慎重さを忘れない
外部からの災いを避けるためには、敵を作らないことが最優先です。 調子が良い時ほど、周囲への感謝を口にし、慎重に行動すること。傲慢な態度は、劫殺の引き金を引く行為だと心得てください。
3. 早めの対処と損切り
劫殺の災いは、突然やってきます。 違和感を感じたらすぐに病院に行く、怪しい話からはすぐに手を引くなど、スピード感のある対応が被害を最小限に食い止めます。奪われる前に手放すという損切りの発想も、時には身を助けます。
まとめ
劫殺は、使い方を間違えれば危険なナイフですが、正しく使えば人生を切り拓く最強の武器になります。
恐れる必要はありません。自分には、ここぞという時に爆発的な力を発揮できるエンジンが積まれているのだと自覚してください。 ハンドル操作(理性と慎重さ)さえ誤らなければ、劫殺はあなたを誰よりも速く、成功という目的地まで運んでくれるはずです。

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