四柱推命の勉強をしていると、漢字を見るだけで背筋が凍るような言葉に出会うことがあります。その筆頭とも言えるのが、今回解説する群劫争財(ぐんごうそうざい)です。
命式にこの並びがあると知った瞬間、多くの人が絶望します。なぜなら、ネットで検索しても、書籍を読んでも、そこには「破産」「離散」「貧困」「裏切り」といった、人生の終わりのような言葉ばかりが並んでいるからです。
しかし、過度に恐れる必要はありません。群劫争財とは、あくまでエネルギーの状態を指す言葉であり、確定した未来の不幸ではありません。むしろ、その強烈なエネルギーの正体を知り、正しい逃がし方さえ心得ておけば、逆に大きな財を築く原動力にもなり得るのです。
この記事では、群劫争財がなぜ最悪の凶運と言われるのか、そのメカニズムを解剖し、この荒波を乗りこなして幸せになるための具体的な改善方法までを徹底解説します。
群劫争財とはどういう状態か?
まずは、この四字熟語が表す情景をイメージしてみましょう。
群(むれ)をなした劫(劫財・奪う人)が、たった一つの財(お金・食料)を巡って争(争う)状態。
これが群劫争財の正体です。 四柱推命の命式において、以下のような条件が揃った時に成立します。
- 日干(自分自身)が強い、もしくは強すぎる。
- 命式の中に、自分と同じ五行である「比肩(ひけん)」や「劫財(ごうざい)」がたくさんある。
- 一方で、自分がコントロールすべき「財星(正財・偏財)」が極端に弱い、または一つしかない。
例えるなら、サバンナにたった一匹のウサギ(財星)がいて、それを10匹の飢えたオオカミ(比肩・劫財)が取り囲んでいるような状況です。 オオカミたちは、獲物を手に入れるために殺気立っています。誰かが手を出せば、全員が一斉に襲いかかり、ウサギは跡形もなく引き裂かれてしまいます。そして、奪った肉を巡ってオオカミ同士でも血みどろの争いが始まるのです。
この「奪い合い」の現象が、あなた自身の人生の中で、お金や人間関係として現れるのが群劫争財です。
なぜ「最悪」と言われるのか?3つの悲劇
群劫争財が恐れられるのは、単にお金がないからではありません。人生の基盤となる「信用」と「愛情」までもが、根こそぎ破壊されるリスクがあるからです。具体的にどのような現象が起きやすいのかを見ていきましょう。
1. お金が入っても一瞬で消える
この命式を持つ人は、不思議とお金を稼ぐ能力や、お金を引き寄せる力は持っています。しかし、問題は「留める力」が皆無であることです。
大金が入ってきた瞬間に、まるで狙っていたかのようにトラブルが起きます。 急な病気や事故で出費がかさむ、親族の借金を肩代わりさせられる、詐欺に遭う、盗難に遭う。 自分では財布の紐を締めているつもりでも、オオカミたちがこじ開けて持っていってしまうのです。結果として、常に自転車操業の状態になりやすく、精神的な安らぎを得られません。
2. 友人に裏切られ、利用される
比肩・劫財は「仲間・兄弟・友人」を表します。群劫争財の人は、一見すると仲間が多く、顔が広い人が多いです。 しかし、その仲間たちは、あなたを助けてくれる存在ではありません。あなたの持っている「財(利益)」を狙って集まってきている有象無象である可能性が高いのです。
羽振りがいい時はチヤホヤされますが、お金が尽きた途端に手のひらを返して去っていきます。 「連帯保証人になってくれ」「必ず返すから貸してくれ」と頼まれて助けた相手に裏切られる。これが群劫争財の人が最も経験しやすい人間関係のトラブルです。
3. 男性にとっては「妻」が奪われる暗示
四柱推命において、男性にとっての「財星」は「金銭」であると同時に「妻・恋人」を意味します。 つまり、男性の命式で群劫争財が成立している場合、それは「自分の女を巡って、男たちが争う」という図式になります。
これは、妻が浮気をする、友人に恋人を奪われるといった直接的な裏切りとして現れることもあれば、自分自身が友人付き合いやギャンブル(劫財の象意)を優先しすぎて家庭を顧みず、妻が愛想を尽かして出ていくという形で現れることもあります。 いずれにせよ、家庭運が非常に不安定になりやすく、離婚を繰り返すケースも少なくありません。
群劫争財は「悪」なのか?隠された才能
ここまで怖いことばかりを書きましたが、群劫争財の人に救いがないわけではありません。 歴史上の人物や成功した経営者の中にも、実はこの命式を持つ人がいます。
群劫争財の人は、強烈な「ハングリー精神」と「競争心」を持っています。 ウサギを一匹奪い合う状況で生き残ってきたわけですから、そのバイタリティは並大抵ではありません。平和な環境ではトラブルメーカーになりますが、弱肉強食のビジネス界や、実力主義のスポーツ界においては、その闘争本能が爆発的な成果を生むことがあります。
問題はエネルギーの「向け先」です。内輪揉めで消耗するのではなく、外の世界へ向けて正しく発散できれば、群劫争財は「一獲千金」の星にもなり得るのです。
群劫争財の不運を断ち切る!3つの改善方法
では、この荒ぶるエネルギーをどのように鎮め、開運へと繋げればよいのでしょうか。 群劫争財を改善するには、命式のバランスを取るための「通変星」を活用するか、生き方そのものを変える必要があります。
1. 「官星」でオオカミを管理する
最も確実な解決策は、「官星(正官・偏官)」の力を借りることです。 官星とは、ルール、規律、自制心、そして警察のような権力を表します。 暴れまわるオオカミ(劫財)を制圧するには、強力な警察(官星)を配備するのが一番です。
これを生き方に取り入れるなら、「自分を厳しく律すること」が不可欠です。 組織に属して上司の管理下に置かれる、厳しいルールのある環境に身を置く、あるいは自分自身に鉄の掟を課す。 「自由」を求めるとオオカミが暴れ出します。あえて不自由な環境や責任ある立場に身を置くことで、劫財の悪さを封じ込め、社会的な成功に変えることができます。
2. 「食神・傷官」でエネルギーを流す
もう一つの解決策は、「食神・傷官(表現・技術・奉仕)」を使うことです。 オオカミたちがウサギ(財)を直接襲うから争いが起きます。そこで、オオカミたちに「芸」や「仕事」を教え込み、エネルギーを発散させるのです。
比肩・劫財(自分と仲間)が生み出したパワーを、食神・傷官(スキル・表現)に変え、その結果として財を得るという流れ(食傷生財)を作ります。 具体的には、専門的な技術を身につける、芸術活動に没頭する、ボランティアや人助けにエネルギーを使うことです。 仲間と争うのではなく、仲間と一緒に何かを「作り出す」方向へ意識を向けると、運気は劇的に好転します。
3. お金の使い方を変える(先出しの法則)
群劫争財の人は、「お金を貯めよう」と執着すると、かえって奪われます。 どうせ出ていく運命にあるならば、奪われる前に「自分から出す」のが賢い処世術です。
自分への投資として使う、お世話になった人にプレゼントをする、寄付をする。 このように、自分の意志で気持ちよくお金を手放すと、それは「奪われた財」ではなく「生きた財」となり、巡り巡って自分の身を守る信用や人徳に変わります。 「ケチると奪われる、配ると増える」 この逆説的な法則こそが、群劫争財の人が豊かになるための真髄です。
まとめ:群劫争財は「使い手」次第で化ける
群劫争財という言葉の響きは確かに恐ろしいですが、それはあなたが持っているエンジンが、普通の車には積めないほど巨大でパワフルすぎることを意味しています。
制御不能になれば大事故を起こしますが、乗りこなせば誰よりも遠くへ、誰よりも速く到達できる可能性を秘めています。
- 自制心を持ち、自分を甘やかさないこと。
- 争うことよりも、生み出すことにエネルギーを使うこと。
- 執着を捨てて、気前よく振る舞うこと。
これらを意識して生きていけば、群劫争財は決して「最悪」の運勢ではありません。 奪い合いの運命を、分かち合いの運命へと書き換える力は、あなた自身の中に必ず眠っています。恐れずに、その強大なパワーと向き合ってみてください。

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